お客様とお打ち合わせをしていると、
OCRを導入すること自体が目的になってしまっているケースを見かけることがあります。
本来OCR導入の目的は「紙を読むこと」ではなく、
「紙やPDFを用いた業務の改善」 を行うことです。
そのため、紙が読めるようになっても、業務が変わらなければ意味がありません。
よくある誤解と課題
では、なぜOCRを導入したのに、
思ったような業務改善につながらないのでしょうか。
よくある誤解と課題を整理してみます。
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OCRを導入すれば紙業務の負担はなくなる
➡️ 実際は読み取った後にExcelやシステムへの転記作業が残る
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読み取り精度が上がれば現場は楽になる
➡️ テンプレートの作成など事前準備が多く、運用開始までに時間がかかる
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AIだからなんでも読める
➡️ 手書きの追記や欄外記入など、イレギュラーには対応できない
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スモールスタートで徐々に横展開できる
➡️ 無数のレイアウトに対応できず、特定部署での利用に留まる
なぜ誤解が生まれるのか
OCR導入が「紙を読むこと」が目的になってしまう背景には、
業務全体を見て判断する機会が不足しているという共通点があります
1. 業務改善の視点を持つ専門家が同席していない
OCRメーカーは、文字を読み取るAIのプロです。
しかし、多くの場合、業務改善のプロではありません。
そのため提案の中心が
「どれだけ読めるか」「精度が高いか」
に寄りがちになり、業務全体をどう変えるかという視点が抜け落ちてしまいます。
このような提案を複数社から受けることで、
お客様自身も「OCRで紙を読むこと」が目的だと認識してしまうケースが多く見受けられます。
2. 実際の業務で使わないまま製品選定が進んでしまう
AI OCRのなかには、無料トライアルが用意されていないサービスもあります。
また、メーカーやベンダーが数種類の帳票を代行で読み取り、
結果のみを返却するケースもあります。
その結果、
・自社でどう使うのか
・前後の作業がどう変わるのか
といった視点が持てないまま、
資料や読み取り結果だけで製品選定が進んでしまいます。
これにより、
「読み取れるかどうか」が評価軸の中心になり、
業務全体の効率化という本来の目的が抜け落ちてしまうのです。
3. 識字率という数値を過信してしまう
多くのOCRサービスでは、
「識字率99%」といった数値が強調されています。
しかし、この数値は多くの場合、
メーカーが独自条件で実施した検証結果です。
実際の業務では、
・FAXによる汚れ
・文字のかすれ
・手書きや欄外記入
といった要素が加わり、
カタログ通りの結果が出ないことも少なくありません。
識字率という数値だけを信じて導入すると、
現場での確認・修正作業が減らず、
結果として業務改善につながらないケースが生まれます。
読むだけ or 業務改善の具体例
では、OCRの導入目的が
「紙を読むこと」なのか、
それとも「業務改善」なのか、
具体的な例をもとに見ていきましょう。
Case1. 展示会のアンケート
A社では、展示会に来場された新規顧客のアンケートをもとに、
翌日すぐにフォローを行いたいと考えています。
オンラインアンケートも検討しましたが、
「後から入力してもらえる可能性は低いだろう」
という意見から、紙でのアンケート方式を採用しました。
さて、このケースではどのような作業が必要になるでしょうか。
OCRを前提に考えると、作業の流れは次のように見えます。
- OCRでアンケートを読む
- 一覧表にまとめる
- 一斉メールを送信する
しかし、本来の目的を考えると、
以下のような流れが理想ではないでしょうか。
- OCRでアンケートを読む
- 一覧表にまとめる
- お客様のニーズを把握する
- 内容に応じて、個別にメールを送信する
このように、
「読むこと」をゴールにする場合と、
「業務改善」をゴールにする場合では、
最終的なお客様へのアプローチが大きく変わります。
OCRはあくまで手段であり、
本当に考えるべきなのは、その先の業務です。
Case2. 注文書の読み取り
B社では、取引先からFAXやPDFで届く注文書の処理に手間がかかっていました。
そこで「OCRで注文書を読み取れば業務が楽になるはず」と考え、
自社専用の注文書フォーマットを用意し、取引先に使用してもらうことにしました。
一見すると、よく考えられた対策のように見えます。
このケースで想定されていた作業の流れは、次のようなものでした。
- 取引先が自社フォーマットの注文書を使用する
- OCRで注文書を読み取る
- 注文データをシステムに取り込む
この流れが実現できれば、確かに入力作業は大きく削減できそうです。
しかし、運用を始めてみると、次のような問題が発生しました。
▶ 取引先ごとに、これまで使ってきた独自フォーマットがある
▶ 「今までの用紙を使えないか」と言われる
▶ 結局、フォーマットが統一されない
その結果、
- OCR用に作った自社フォーマットはほとんど使われない
- 想定していない帳票が増え続ける
- OCRの設定が帳票ごとに破綻する
という状況に陥ってしまいました。
このケースの失敗要因は、
「OCRに合わせて業務を変えようとしたこと」 にあります。
注文書のフォーマットは、
取引先の業務に深く根付いていることが多く、
発注側の都合だけで簡単に変えられるものではありません。
このようなケースでは、次のような視点が必要です。
▶ フォーマットはバラバラであることを前提にする
▶ OCRは「読むため」ではなく、「後工程を支えるため」に使う
▶ 全件自動化を狙わず、人が判断する工程を織り込む
つまり、OCRありきで業務を設計するのではなく、
業務に合わせてOCRを使うことが重要です。
どうすればいいか
ここまで見てきたように、
OCR導入がうまくいくかどうかは、
「どのサービスを選ぶか」以上に、
何を目的として導入するかで大きく変わります。
多くのOCRサービスは、
「どれだけ正確に文字を読めるか」
という点に特化しています。
もちろん、それ自体は重要な要素です。
しかし、実際の業務では、
読むことよりも、その後の
・確認
・修正
・整理
・連携
といった工程に、より多くの時間がかかっています。
そのため、
OCRを導入する際には、
「読めるかどうか」だけで判断するのではなく、
・読み取った後の業務がどう変わるのか
・人が関与すべき工程はどこか
・イレギュラーが発生したときに運用できるか
といった視点で、全体を設計することが重要です。
AISpectでは、
OCRをあくまで業務改善の一工程として捉え、
前後の作業まで含めて、
本当に業務が楽になるかどうかを基準に設計しています。
OCRはゴールではありません。
業務改善のための一つの手段として、
どのように使うかを考えることが、
失敗しないOCR導入につながります。