当社では2019年に自社グループの業務効率化のために、AI OCRを導入いたしました。
しかしながら、様々な課題に直面し、結果的に自社でサービスを開発するに至りました。
ここでは、当社が経験した、あるいは当社のサービスをご検討いただくお客様の声で中で感じた共通の課題や考え方について記載いたします。
ポイント1:OCRが本当に必要か
お客様のお話を聞いていると、OCRを使わずに解決できるケースも少なからずあります。
例えば、これまでは取引先からPDFしかもらえなかったが、相談してみたところCSVが貰えた、というケースです。
CSVであれば加工すればシステムに取り込むことができるため、そもそもOCRを行わなくてもよくなります。
取引先からPDFしか貰えないからOCRで業務改善したい、という方は一度ダメ元で相談してみるとよいでしょう。
紙を完全になくすことはほぼ不可能に近いと思いますが、読み取りが必要な帳票のうち、全体の5%でも削減することができれば、メリットが大きいのではないでしょうか。
業務を見つめなおし、本当に紙である必要があるのか、OCRで読み取る必要があるのか、再度検討してみましょう。
ポイント2:様々なサイトを探す&生成AIを活用
様々な製品比較サイトやブログなどを参考に情報収集をするかたも多いでしょう。
当社でもいくつかのサービスに掲載していますが、これらのサイトは有償で掲載していることがほとんどです。
そのため、「オススメのAI OCR10選」「AI OCRベスト5」のように各サイトで掲載されているサービスが変わってきます。
情報収集を行う際には、上記のようなサイトを複数参照し、ベストなサービスを探すことをオススメします。
また最近では生成AIを使用する方法もあります。
例えば「図面が読めて月額1万円以内のAI OCRサービスを教えてほしい」といったように、具体的な目的と予算を生成AIに伝えることで、回答してもらえるケースがあります。
ポイント3:読み取り精度を理解する
読み取り精度が低ければ、AI OCRを導入するメリットはありません。
ですが、100%読み取ることはできないことを理解したうえで検討しましょう。
AI OCRは、AI技術を用いることで、これまでよりも精度よく読み取れるようになったものであり、文字を完璧に読む技術ではありませんので、検討する際は期待値として考えてみるといいでしょう。
では読み取り精度はどのぐらいあればいいのでしょうか。
AI OCRサービスでは、ホームページ上に読み取り精度XX%以上と掲載しているサービスも多くあります。
当社が提供するAISpectでも活字読み取り99%と記載しており、これらの情報は導入時の検討項目になると思います。
ですが、AI OCRには様々なソフトウェアやサービスがあり、得意な分野が異なります。
具体的に説明するため、次の例を見ていきます。
製品 | 得意分野 | ホームページ上の読み取り精度 |
---|---|---|
A社 | 活字 | 98.6% |
B社 | 手書き | 99.2% |
この例では、ホームページ上の読み取り精度なのでB社のほうが精度が高いです。
ですが、読み取りたい帳票が活字の帳票であればどうでしょうか。
次に実際の読み取ってみた際の精度を見てみましょう。
製品 | 得意分野 | 実際の読み取り精度 |
---|---|---|
A社 | 活字 | 98.2%(98.6%) |
B社 | 手書き | 96.6%(99.2%) |
()カッコ内の数値はホームページ上の読み取り精度
今度はA社のほうが高い読み取り精度になりました。
各事業者が公表している数値は各社のテスト帳票を用いたものとなっており、統一されたものではありません。
そのため、この例のようにホームページ上の結果とは異なる結果になることがほとんどです。
中には実際の読み取り精度は70%程度にとどまってしまったり、逆にほぼ100%の精度で読み取れるというケースもあります。
そこで、検討時には必ず実際の帳票でトライアルしてみることをオススメします。
有償トライアルしかないケースの場合は、メーカーに帳票を共有して読み取ってもらうといいでしょう。
この際、1枚だけではなく複数枚読み取ってもらうことで、読み取り精度が自身の期待値を満たしているかどうか確認が可能です。
ポイント4:使い勝手を確認する
使い勝手というとシステムの操作のしやすさを思い浮かべる方が多いと思います。
当社では使い勝手は実際のシステムの操作性はもちろん、どのような帳票が読めるのかという点が重要だと感じています。
汎用性とも言い換えることが可能です。
AI OCRの多くはテンプレート型に対応しており、読み取り位置が固定化された定型帳票の読み取りに非常に有効です。
テンプレート型では、読み取り位置を指定した帳票定義(=テンプレート)を作成することで、指定した位置の文字を読み取ることが可能です。
セミナーのアンケートや利用申込書など、フォーマットが決まっている場合は、テンプレート型に対応していればほとんどのケースで問題ないと言えます。
しかし、請求書や注文書など会社ごとにフォーマットが異なる帳票を読み取りたい場合はどうでしょうか。
各社フォーマットが異なるため、それぞれ読み取り位置を指定する必要があります。
すなわち取引先の数だけテンプレートを作る必要があり、現実的ではありません。
では、請求書や注文書を読みとる専用機能(専用AI)が提供されている場合はどうでしょうか。
テンプレートを作らずに、様々な帳票を読み取ることができ、出力時のレイアウト(列順)も決まった形で出力が可能になります。
このような仕組みは、特化型と呼ばれ、請求書、注文書、住民票や名刺など必要な項目が共通している、かつニーズが多い帳票に対して提供されています。
ですが、誤った項目を読み取ってしまったり、ほしい項目に対応していないなど全てのレイアウトを読み取ることが出来ない場合があります。
そこで生成AIの登場です。
生成AIを利用することで、より具体的な指示を行うことができ、汎用性を大幅に向上させることが可能です。
ポイント5:価格よりも…
AI OCR を導入するうえで価格も非常に重要なポイントでしょう。
多くのAI OCRサービスは、月額あたり1万円~3万円の年契約サービスが多いです。
そして読み取り種別に応じて単価が決まっており、1項目あたりの単価、または1枚あたりの単価で設定されているサービスがほとんどです。
1項目当たりの単価の場合は、1つの帳票に30項目あれば、項目単価3円×30項目=90円/枚 という計算になります。
そして、契約しているプランの金額に対し、単価分が追加でかかるサービス、一定の金額以内であれば追加費用が掛からないサービスなど様々です。
1枚当たりであれば計算は容易ですが、項目単価を採用しているサービスの場合はどの程度費用が掛かるのかはかなり厄介です。
ただし、注意しなければならないのは、高い製品または予算に収まる製品がベストではないということです。
ポイント3でお伝えしたように、AI OCRには向き・不向きがあります。
そのため、高い製品を導入しても失敗することもあります。
あくまで自社に適したサービスの選定が最も大切と言えます。
ポイント6:後続処理を意識する
AI OCR 導入で忘れがちなのが後続処理です。
AI OCRは文字の読み取りがターゲットとなるため、後続作業を意識せずに導入すると、部分最適化しかできず作業全体では非効率になってしまう場合もあります。
ではどのような後続処理があるかいくつか例を挙げてみます。
- 読み取ったデータの確認・修正
- 元ファイルのリネーム
- 出力データの加工(列の並び順変更など)
- システムへの取り込み
- 指定フォルダへの保存
AI OCRではこれらの作業に対応していないことがほとんどです。
そのため、AI OCRはRPAとの連携が必要なシーンが多くあります。
これらを意識せずに導入してしまうと、RPAの開発費が思ったよりも高くなってしまい、結果的に費用対効果が見込めない、ということにもなりかねません。
AI OCRは作業の一部であり、業務全体を効率化するためのツールとして検討することを意識しましょう。
AISpectについて
このようにAI OCRを導入するうえでは様々な点を考慮する必要があります。
当社が提供するAISpectでは、自社の業務効率化で得たノウハウをサービスに詰め込むことで、高機能・低価格・使いやすいサービスを実現しています。
契約期間の定めもなく、最短1か月からご利用可能なため、スポット利用にも最適です。
またRPAと連携した後続作業の自動化のご支援も承っております。
紙や書類のデータ化にお困りのかたは是非一度ご相談ください。